憲法9条に沿って生きる
古代の中国で書かれた「魏志倭人伝」という文献の中に「邪馬台国では盗みが少ない」という話が出てくる。
海外に行くと、その国の人達は私に優しくしてくれる。なぜかと聞くと「あなたが日本人だからです」と。災害時の助け合いやスタジアムでのマナーの良さ、クールジャパン、労働観、道徳心…が素晴らしいと。
もはや“日本人”は世界の中でのブランドともいえるだろう。
日本人の道徳心の高さについては、驚くべきことに、このように千数百年も前から定評があった。
ただ、日本人が元来持っていた道徳心の高さが、すみずみまで行き渡ったのは、やはり江戸時代だろう。道徳心というものは、戦乱の世が続けば、なかなか保てるものではないからだ……。二百年以上も戦争がなく、争いごとも少ない江戸時代を経験したことが、日本人の心に大きな影響を与えていたのである。
その江戸時代の中でも、日本人の道徳心に最も大きな影響を与えた人物を一人だけあげるとすれば、中江藤樹だと思う。「近江聖人」とも称された中江藤樹の人となりを物語るエビソードは沢山あるが、「正直馬子」の話が有名だ。身分を超えて、多くの人が藤樹のもとに集まり、人として生きる道を学んでいたことが解る。
現代は、江戸時代と並んで平和な時代だ。こういう平和で豊かな時代だからこそ、自分の欲望を満たすことに必死になるのではなく、人として生きる道を謙虚に学び続ける、素直に行動に移すべきであると思う。
良知を磨き、良知に従って生きる…
中江藤樹の言葉を借りれば、「人は誰でも天から与えられた美しい心を持っている」という。美しい心は、相手の美しい心を呼び覚ます。
現代においての、その良知は憲法9条であると思う。憲法9条に沿って生きるとは、現代の平和を守り、自分の損得など考えずに、日本の人々の美しい心に触れ、自分の中に眠っている美しい心を取り戻すということだと思う。
憲法9条を守り、憲法9条と共に生きる。今年は、その正念場。戦争を知らない私、そしてあらゆる世代の人達と、これからこの良知を一緒に守っていきたい。
良知を磨けば、「真善美」がわかるようになる。つまり良知を磨けば、どういう生き方が美しく、逆にどういう生き方が恥ずかしいのかがわかり、善悪を判断する力がつくようになる。良知に沿って生きる、憲法9条を守ることが、正しい行いに繋がるんだと思う。
「憲法9条」この宝物を、私たちは大切に大切に守っていきたい。